InDesignの文字組みアキ量設定

InDesignの文字組みアキ量設定は、文章を読みやすく組むために欠かせない機能です。読みやすい文字組みといえばベタ組みが代表的ですが、それ以外の組み方への活用方法を模索してみました。

例えば、テキストにプロポーショナルメトリクス(+カーニングのメトリクス)をかけた後、もう少し詰めたい、または空けたい、といった時、単純に字間を調整するならトラッキングや文字ツメが使えますが、それでは漢字や欧文も一様に影響を受けてしまいます。

画像1枚目はプロポーショナルメトリクス(+カーニングのメトリクス)をかけたところ。2枚目はトラッキングで-100追加で詰めたところです。作例ですので、少し大袈裟に詰めています。
プロポーショナルメトリクスでは、「月」や「日」など一部を除いて、漢字や欧文はベタ組みと同じ幅です。
画像の作例はトラッキング-100ときつめにかけているので、欧文がくっついてしまっています。
かといって欧文を避けてトラッキングを適用するのも面倒で、同じ設定を何箇所も使い回す場合は非効率的です。
こんな時、文字組みアキ量設定で「ひらがな」「カタカナ」「行頭禁則和字(「ぁ」「ゃ」のような小書きかなはこの分類)」「上記以外の和字(漢字はこの分類)」のアキを調整すると、漢字同士の字間や欧文にあまり影響を与えずに詰めることができます。

トラッキングの単位は[/1000 em](文字パネルのトラッキングのアイコンにカーソルを合わせると確認できます)、1emは1文字を意味し、要するに千分率なので、トラッキング-100[/1000 em]は-10%にあたります。つまり、トラッキング-100のイメージに合わせてアキ量設定で-10%にすると、似たような印象を保てます。
ここでは微調整は省きますが、このままでもトラッキングだけで詰めるよりは良いと思います。文字組みアキ量設定を作っておけば、例外が発生しない限りテキストの流し込みで済ませられるのも便利です。


ここで、句読点の後ろを極端に空けたらどうだろう、と思いついて、設定を作ってみました。

少し欧文っぽい……?
使い所はともかく、このような実験的な組み方も可能です。


アキ量設定を利用して、ツメ組みとは逆にアケ組みを作ることもできます。

75%アキ(二分四分、トラッキングに読み替えれば750)をベースに、句読点の前や欧文の字間を空けすぎない設定にしました。ただし、文字組みアキ量設定は飽くまで日本語や中国語向けの機能で、欧文の単語の間隔(いわゆる半角スペース)は調整できません。単語の間隔を変更したい場合は、段落設定の「ジャスティフィケーション」をカスタマイズします。作例では単語間隔の最適値を250%に広げました。
文字種ごとにアキ量を変えられるので、このような単純な均等アキではない設定も作成できます。


ちょっと脱線して、今度はありえない設定を作ってみます。アキ量設定では-50%が最小値のようなので、全て-50%にしてみました。

読めません。もし最小値が-200%とかだったらテキストを右から左に流せるんじゃないかと思ったのですが、残念です。しかし他の詰め設定も併用したらどうなるでしょうか?

先ほどのアキ量設定にトラッキング-1000、ジャスティフィケーションの文字間隔-100%を追加しました。
確かに右から左に流れていますが、文字がテキストフレームから飛び出し、どこまで行ってもテキストフレームの終端に到達しないせいか、行が折り返されません。InDesign編集画面でも文字がスクロール範囲外まで伸びています。

駄目ですねこれは。


最後にアキ量設定を新規作成する際の注意点を指摘します。
アキ量設定の新規作成時に「元とするセット」を選ぶ項目があり、ここでデフォルトで用意されたセットを選択したかどうかで挙動が変わります。

この違いは、それなりに無理がある状況でない限りそう目立つものではありませんが、想定外の挙動を招く可能性があります。

この作例は、上下とも設定値が全て0%で、違いは新規作成時の「元とするセット」が上側はデフォルトで存在する「行末約物半角」、下側は「なし」であるところだけです。
マゼンタで示した文字の後ろのアキが見るからに異なっています。全ての設定値を0%にしてあるので、想定されるアキは均等なアキ、つまり下側の「元とするセット:なし」で作成した方です。
デフォルトのセットを少しカスタマイズしてベタ組みに使うのであれば問題になることは少ないであろう、と思いますが、今回紹介したようなアキ量設定を作成する場合は、「なし」から作った方が良いでしょう。


InDesignの文字組みアキ量設定を使えば、綺麗な文字組みから奇妙な文字組みまで幅広く対応することができます。設定次第で妙なことができる、というのは良いことだと思います。ベタ組みという基本も大事にしつつ、応用的な使い方もできればいいな、と考えています。


作例テキストは青空文庫に公開されている宮沢賢治著『ポラーノの広場』冒頭部を改変して使用しています。
https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/card1935.html